玉川 悠己
紀行作家として雑誌デビューを飾り写真家としてのスタートをきる。 年に数回海外を旅して景色やドキュメンタリー写真を撮影し雑誌や個展などで自らの作品を発表。被写体についても撮影の幅を広げ近年は家族写真やペットの撮影の仕事も 多くこなしている。
略歴
千葉県出身
関西学院大学 文学部 英米文学科卒業
コロラド州立大学 天然資源管理学部卒業
在学中に成績優秀者の一員である「Dean's List」に選出される。
日本の大学では英文学を学び、卒業論文の対象としてHenry David Thoreau の「Walden」を選び、
文明に対しての彼の理論の不一致に対して執筆。
コロラドの大学では森林学や野生動物管理学、Watershed Sciencesなどと共にMicro EconomicsやHistory of American natural historyを学び、幅広く天然資源管理にまつわる学問に携わる。卒業年には大学が保有する広大な山地に1ヶ月間こもりきってその地の生態系、山火事への対処や人間との最良の共存体系などのフィールドワークに携わる。
コロラドに行くことになった理由など、どうして海外に惹かれたのかなどは、以下に書いてあります。
僕の自己紹介を少しだけさせていただきますね。高校を卒業するぐらいからご説明いたしましょうか。
高校を卒業した僕は、生まれ育った千葉からは遠い関西の大学に入学しました。漠然と英語に興味があるという理由で文学部・英文学科を選び、以後4年間兵庫県で過ごすことになります。
大学2年の秋頃だったと思います。アルバイト先のテレビ局で一つの写真集を見つけました。星野道夫という写真家が撮影したアラスカの写真集でした。ずっと向こうまで続いていく平原の真ん中に湖があり、ムースというシカ科の動物が水を飲んでいるシーン。川をのぼるサケをクマがつかまえてかぶりつき、そのおこぼれを待っている鳥たちがクマを囲んでいる。写真にそえられている言葉とともに人の入り込まない自然の世界に強く惹かれました。
写真集と彼の言葉をまとめた著作集を何度も読みました。そのうちに、彼がそうだったように、僕も自然というものを学びたくなりました。知的な好奇心と探究心に溢れていました。大学の夏休みを使ってあちらの大学の学部長にアポイントメントを取って直接会いにいきました。これから自分が何を学びたいのか、そしてその大学できちんとそれを学べるのか、どうしても直接あって聞きたかったのです。今から思えばその時は英語も話せなかったし、ジェスチャーで意思疎通を図るのにも限界があったと思います。でも、とにかく自分を動かすパワーがあった。未だ見ぬアメリカで思いっきり勉強してやるのだという強い意志がありました。
日本の大学を卒業後、僕はコロラドの大学に編入しました。入学、ではないのは既に日本で取得済みのいくつかの単位をコロラドの大学に認められたからです。
日本でも相当勉強していきましたが、最初の授業でいきなり出鼻をくじかれました。英語がとにかく聞き取れず、授業についていけなかったのです。とにかく必死だったので、それからは毎日授業後に教授のもとにノートを持っていってはわからない箇所を質問し、その後に図書館に行って教科書を読み込むことを繰り返しました。それが1週間、1ヶ月、3ヶ月と続き無事に学期末の試験もクリアして、なんとかはじめての学期を終えました。
次の学期からは成績もみるみるあがりはじめました。食事などは食べるというより、胃の中に詰め込むという感覚で、食べたらすぐに図書館に行って深夜まで勉強し、寮に戻ってからはルームメートの邪魔にならないように廊下にでて地べたに座りながら勉強していました。今までの自分の人生の中で、あれほど何か一つのことに打ち込んだ時期はなかったと思います。それぐらいとにかく勉強ばかりしていました。
そんなこんなで、コロラドの大学も卒業の時が迫ってきました。そんな時に、僕はヨーロッパを旅して撮りためた写真を日本の雑誌に売り込み始めたのです。星野道夫さんの影響もあり、僕は写真に関わる人生を送りたかった。ただしその被写体は自然ではなく、旅という非日常の世界でした。就職をしたらスーツをきて毎日を過ごすサラリーマンになっていたのでしょうが、どうもそういう未来図が描けず、自分の撮った写真がどうにか雑誌に載ったりしないものだろうかと、自分のHPのURLを全世界の色々な編集者に送り続けていました。
ある日、一通のメールが来ました。「想像力をかき立てるすばらしい写真です。一度プリントを見てみたいので、また連絡ください」とのことでした。このメールを受け取った半年後、実際に僕の旅の写真と文章が10ページの旅物語として掲載されました。そしてその時に写真家として一歩を踏み出そうと決意し、2014年現在の自分に至っております。
星野道夫という写真家との出会いから始まった現在の自分ですが、やはり表現するということが好きなのだと思います。それがないとどうしてもだめなのでしょう。写真で何かを提示し、わき上がってくる言葉を世に送り出すことが好きなのです。
2014年の夏から始めた家族写真は旅の写真とは全くかけ離れたものなのですが、人と人が関わっているその記録を残したいと思い始めました。そしてその関わりの対象が、僕の場合は「家族」だったのです。
家族の中に流れている暖かい時間を記録に残したいという衝動からはじめた家族写真撮影。その写真を未来の子供が見返せるようにと、結婚する前日に自分がどのように愛されて育ってきたのかを振り返ることができるようにと、撮影の依頼を下さった方のために今日も明日も頑張って撮影に出向いております。
随分長くなりましたが、私はそんな人間でございます